飛行機のしくみ・作り方


はじめに

「ものづくりコンテスト」という趣旨上、 「この通り作れば飛ぶ飛行機が出来る」というお手本を見せるのは違うと思います。 「ものづくり」の根底は試行錯誤だと考えるからです。 しかし闇雲に思い付きだけで試行してもいい結果が出てきません。 しくみ・原理を理解してそれに沿った試行が必要です。 という訳でここでは、試行のヒントになるであろう飛行機のしくみについて簡単にレクチャしたいと考えます。 なお、航空宇宙コースではないので、 イメージさえつけばいいかなと結構雑な解説になっています。

飛行機には翼がついています。翼は斜めに風が当たると当たった方向に力を発生します。この手の話だと揚力だのベルヌーイの定理だの速い流れは気圧が低いだのとややこしいことを書きだす文献が出てきますが、「翼で風の向きが変えられたんだから、その反作用が出ても不思議じゃないよね」程度の理解でいいのではと考えます (航空宇宙コースじゃないし)。

もちろん程度問題ではありますが、風に対する角度θが大きければ大きい程、赤で示した横向きの力は大きくなります。 また平板ではなく、曲げた板や曲線、流線形など様々な形がありますが、考え方は実質同じです。

この原理を主翼に適用すると飛行機を浮かせる力になりますし、帆に適用するとヨットを進める力になります。 また回転する軸に取り付けるとプロペラやスクリューになります。

尾翼

あたりまえですが飛行機は進行方向に機首を向けておく必要があります。 飛行機は空気の中を突き進んでいるので、 飛行機から見ると逆に進行方向から風が吹いてきていると見えます。 そこで重心より後ろに小さな翼をつけておくと、 何かの原因 (外乱) で進行方向と機首がずれても元に戻るような力が働きます。 この小さな翼を尾翼と呼びます。

飛行機は縦方向と横方向 (ピッチとヨー) にずれる可能性があるので、 水平・垂直二種類の尾翼を付けることが一般的です。

矢やダーツにも矢羽やフライトと呼ばれる羽がありますが、これも同じ原理で矢尻やポイントを先端に向けてきちんとささるためについています (ドリルのように回転させて殺傷能力を高める役割もあります)。 また原理上尾翼は機首を風上に向けるためにあるもので、横風が強い時など進行方向と (飛行機から見た) 風上が異なるときは斜め方向に進むことになります。 youtube で横風・着陸等で検索すると、それが分かる動画が見られます。

なお一部の戦闘機など水平尾翼が無い飛行機というのも存在することから、 尾翼というのは必ず無ければならないというものではありません。 上手く翼の形状を考えると尾翼が無くても機首を風上に向けることができます。 せっかくの「ものづくりコンテスト」ですからそういう機体にチャレンジしてみるのもおもしろいかもしれません (飛ばなきゃ意味ありませんが)。

主翼

尾翼は機首を前に向けるためなのに対し、機体の重さを支えるためにあるのが主翼です。 体重を支えるため大きな力を生み出す必要があります。 先ほど翼は風に対する角度が大きければ大きい程、横向きの力 (支える力) は大きくなると書きましたが、実は角度を大きくすることは後ろ向きの力 (抵抗力) が大きくなって得策ではありません。 そこで翼を大きく取ることで大きな力を生み出すことが一般的です。

実は角度を大きくする、翼を大きくすること以外にもう一つ大きな力を生み出す方法があります。それは翼に当てる風を速くすることです。 飛行機にとって翼に当てる風を速くするということは、自機の速度を上げるということです。すなわち速い飛行機になればなるほど主翼は小さく、遅い飛行機になればなるほど主翼は大きくなります。 この辺はプロペラの推進力やモータや電池の重さ等によって機体自体の大きさも含め決めて行かなければなりません。

ところで主翼が機体の重さを支えるためには、最初に書いた通り向かってくる風に対して若干の角度を取ってないといけません。機体に対して斜めに翼を取り付けたり、 それと同じ意味をなす曲線状の翼にするという手もあります。

ただそんな面倒なことをしなくても、 主翼がちょっと上向きになって飛ぶようバランスを取れば事足ります。

力学的バランス

今しがた「バランスを取ればいい」と書きましたが、飛行機にとってバランスは重要です。 飛行機は主翼で重さを支えています。 主翼の真ん中で糸でつるされていると考えていいでしょう。

そこが重心が大きくずれていると飛行機はひっくりかえってしまいまともに飛ぶことができません。

重心を主翼の真ん中の真下に置いて、釣り合うようにしなければなりません。

とは言えこれは原則です。実際は少しだけ重心を前側に持ってくるようにします。 ただし、そのままだと飛行機は前のめりになってしまうので水平尾翼を上向きにし、 下向きの力を発生させてバランスを取ります。

前のめりになる力 (回転力) は重力なので常に一定です。 一方それを防ぐ力は翼で発生させているため、 飛行機が速くなれば大きく、遅くなれば小さくなります。 すなわち速くなれば機首が上向きになり、その分風に対する主翼の角度が大きくなり、 上向きの力が増し、結果として高度が上がります。

自転車に乗っていると体験することですが、下り坂ではペダルを回さなくてもスピードが上がります。逆に上り坂ではスピードが下がります。 飛行機も同じです。 高度が下がればスピードは上がりますし、逆に上昇すればスピードは下がります。 そのため例えば外乱等で飛行機が下降するようになったとしても、 高度が下がることで速度が増し、速度が増すことで機首が上を向き、 機首が上を向くことで上昇しだし、上昇することで速度が下がり、 速度が下がることで機首が元に戻る、という機構が働き、高度を一定に保とうとします。 またスロットル (プロペラの回転速度) によって飛行機の速度を変えられる場合、 速度を上げると上昇し、速度を下げると下降するといった高度の制御が可能となります。

バランスと言えば、左右方向 (ロール方向) の回転もバランスを取らないといけません。 バランスが悪いと飛行機はひっくり返ってしまいます。 これは正面から見て主翼の付け根より下に重心が来るように調整します (左)。

また主翼の両端を少し上に反らすのも効果があります (右)。 外乱によって左右方向に傾くと、飛行機は傾いた方向に動きます。 翼の両端が上に反っていると元に戻るような力が発生するからです。

なお、このひっくり返らない力を大きくしすぎると操縦性が悪くなります。 ほどほどにしてください。

構造的バランス

飛行機が延々と飛び続けるためには、 主翼が十分な上向きの力を派生する速度を維持する必要があります。 当然飛行機には空気抵抗があります。 空気抵抗に打ち勝つだけの力をプロペラが発生しなければ飛行機は飛び続けません。 空気抵抗は飛行機が速ければ速い程大きくなります。 すなわち速く飛ばすためにはより大きなモータ、大きな電池を必要とします。

小さなモータ・小さな電池しか使えないのなら速度を遅くしなければなりません。 速度が遅いと翼が発生する力は小さくなります。 それを補うため大きな翼が必要になります。 機体もできるだけ軽い方がよいでしょう。

ところが一般に構造物は大きければ大きい程、軽ければ軽いほど壊れやすくなります。 飛んでいる途中に重さを支えきれなくて、また着陸に失敗して、 どこかが折れたり壊れたりするかもしれません。

大きさ、軽さ、速さ、丈夫さといった構造的なバランスも上手く取らないときっと飛ぶ飛行機はできないのではないかと思います。


[戻る]